『夕刊フジ』2015年12月2日付

特攻を生んだ戦局 「若者たちはなぜ特攻を選んだのか」吉本貞昭著

若者たちはなぜ特攻を選んだのか

敗色濃い太平洋戦争で、大西瀧治郎中将が生み出した神風特別攻撃隊。なぜ、多くの若者が1つしかない命をささげたのか。本書は、特攻を生んだ戦局の解説に始まり、特攻に志願した隊員たちの遺書や残された家族たちの戦後まで詳述し、特攻の真実を浮かび上がらせている。
特に、正午の終戦の詔を聞いた後の夕刻、第5航空艦隊司令長官の宇垣纏中将の同行指揮のもと、11機の最後の特攻機が出撃した。終戦を知りながらの出撃は決して強制ではない。その犠牲的精神の上に戦後復興が成ったのだ。
だが、戦後教育を受けた者は、特攻隊員の真情を理解することはできないだろうと著者は言う。だからこそ、戦後70年の節目に「“愛国心”というものをすっかり失くしてしまった青年たちが、それをもう一度取り戻す」ために若い人にこそ読んでほしいと、本書を著した。全文総ルビ付きなのもうなずける。